そこはかとなく、マンホールの蓋

カテゴリ:萌え点

【マンホールの蓋の文字 「萌え点」の分類研究】

- はじめに 導入編 -

なぜか点の一つ多い文字が路上の蓋に使われていることがあります。

たとえば、「 弁 」が「 弁、」と書かれています。
異体字という漢字です。

なにを言っているのか分からないと思います。

実例で説明します。

これが普通の弁です。
012_R0027407

多少ゆがんでいますが、いつも見慣れた「弁」です。

しかし、これや
003_R0027137


 005_R0027136

これ
015_R0027322

018_R0027389

点が多いですね。

間違い!?

ではありません。

????

また、 ゴミや鋳造のときのエラーでもありません。

意図的に存在する点です。

たぶん、なにを言っているのかわからないと思います。


文字には、そもそも絶対的な正誤がありません。
辞書に載っていない文字も沢山存在します。

常用漢字(当用漢字)や正字といわれている文字・漢字以外の文字も立派に存在し、
通用しています。

斉が斎だったり、齋、齊だったりするように、
「弁」が「弁、」だったりします。

異体字といいます。

異体字とは、読み方や用い方が同じでも字形に異なる部分のある字体のことです。

そんな点の多い異体字が、日本国中の路上に、マンホールの蓋にあるのです。
なかなか興味深いです。
また、この不思議な点には多様な種類があります。
 
よく観察する事によって見えてくる差異というものは、
マンホールの蓋を観察する趣味人にとって、深い興味の対象です。
路上の鋳鉄の中、ひっとりと存在している点。
それはなんとも愛くるしい。
特別に「萌え点」と命名しました。

現代風に言うならば、萌えるポイント。
興味の対象が「点」であるという事。萌える「ポイント」と「点」をかけており、
「萌え点」とは、なかなか秀逸なネーミングであります。自画自賛。

ちなみに、この「萌え点」ですが漢字研究者のあいだでは、

補空
捨て筆
咎なし点

などと呼ばれています。

「萌え点」という名称は、その点の印象から命名しましたが、
その機能からいうと、補空・捨て筆とはよく言ったものです。

そもそも、何故このような点があるかというと、

・手書きの揺れ

・旧態の字体をを意識しつつ
 新書体に改めようとするときに生じたもの

・バランスを補うための点

・文末の句読点のような役目

・部分を注目させるとともに、それらと区別し、
 機能を特定する記号としての役割

以上のような理由からです。
なるほど。補空・捨て筆とはよく言ったものです。

マンホールの蓋にキャッキャッしておりましたが、
まさかこんな方向にまで興味が向いてくるとは思いませんでした。
恐るべき趣味の世界。

一度気付いてしまうと、萌え点はかなりの頻度で発見する事が可能です。
不思議なものです。
今まで、見えていたけど見えていなかったものを認識する事ができるようになってきました。


たとえば、

印象派のモネの目が、我々に空気の美しい調和を見せてくれるようになったように、
ターナーがむせぶような海上の霧を描いて以降、
泣きたくなるような海の霧を見ることが出来るようになったように、
白昼夢のようなゴッホの眼で、激しい風景を切り取る事が出来るようになったように。
今、萌え点をはっきりと認識出来ます。 (おおげさ)

路上の点は、天球の星のように地上の星として、今、我々に囁きはじめています。

天体観測ならぬ、地上の星、萌え点観測から何が分かるのか?
まだその答えは出ていません。
今、まさに大航海時代。新しい羅針盤を持って路上を航海しているのです。(大風呂敷)

萌えるではありませんか。

さあ、
ご興味を持っていただいた皆様。
路上の星、萌え点の観測を始めようではありませんか。
 

ここで、萌え点の定義を高らかに宣言します。


・意図して存在する点であるが、常用の文字では無い。
・旧字などに特有の点では無い。
・傷やゴミ、エラーによって出来た点では無い。


「弇」の萌え点の3種類目を紹介します。

こちらです。
415640443
(「蓋散歩びと」さん撮影)

拡大
415640375

「暁の明星型」の萌え点です。

右側、中央下よりに点が鎮座しております。
この萌え点の場所は、かなり珍しいです。

・「ハンカチ落し型」のように字体の下部ではありません。

・「予想の斜め上型」のように字体の上部でもありません。

右側、やや中央よりに存在しています。
この位置は珍しいのです。

今まで紹介してきた萌え点のほとんどが上部か下部に出現しています。

字画の中にもともとあった点が、別の場所に移動した「移点」の場合でも、
新たに点が加えられた「加点」の場合でも、萌え点は右上か右下に
出現する場合が多いです。
今回のような萌え点は、あまり見る事がありません。
また、絶対数も少ないです。


さて、

地図上の東西南北において、東はおおむね右側に表記されています。
今回の萌え点は、水平に書かれた線の右側に出現しています。
萌え点直下の線は、まるで水平線か地平線のようです。

明け方の東の空に見える金星を「暁(あかつき)の明星」(明けの明星)と言います。
太陽が昇りきってしまうと見えなくなってしまいます。
明け方の短時間だけ見られる星です。

今回の珍しい萌え点は、この「暁の明星」とその出現や印象が非常に重なります。
「暁の明星型」と命名した由縁です。

あまり見ることはありませんが、この萌え点を目にした際には
天球に力強く・はかなくかがやく暁の明星を思い出さずにはいられません。



ちなみに、17-18世紀のオルガン曲に
ブクステフーデ「いかに美しきかな,暁の明星は」という作品があります。
うっとり。

「いかに美しきかな、暁の明星型の萌え点は」


次回は「道」の萌え点を紹介します。

前回にひきつづき、「弇」の萌え点を紹介します。
今回は、「ハンカチ落し型」です。

057_R0027143

空気弇の蓋です。東京都北区の蓋ですが、都内に散見します。
「気」がややこしい字体ですが、旧字(正字)の「氣」です。 萌え点ではありません。

弇の右下にご注目ください。点が多いです。萌え点「ハンカチ落し型」です。

拡大
058_R0027144

かなり立派な「ハンカチ落し型」の萌え点です。
もっと拡大
059_R0027145

間違いなく意図的にうたれた点です。
何の迷いもありません。すがすがしい。
撥ねの部分にも力が漲っています。 

056_R0027146
斜めからも撮影してみました。
惚れ惚れする萌え点ですね。うっとり。

次回も弇の萌え点を紹介したいと思います。

「弇」の萌え点、「萌え尻尾型」を紹介します。

復習:
「弇」は、「えん」と読みます。
覆う」という意味です。

「制水
弇」のように使われます。制水弁の入っている蓋という意味ですね。
こんなかんじです。
064_R0027340

弇を拡大
065_R0027345
東京都東村山市の制水弇です。
東村山駅周辺で良く見かける蓋です。

さて、それでは本題にはいります。

同じ東村山市の制水弇の蓋です。
061_R0027333
始めに紹介した蓋は右書きの制水弇でしたが、
こちらは左書きの制水弇です。
おそらく、こちらの方が古いのでしょう。
そして、弇に萌え点がついてます。

拡大
062_R0027335
右下、9画目にくっついた形で点があります。
「萌え尻尾型」の萌え点です。 

参考:
「弁」の「萌え尻尾型」はこちら
005_R0027136

「枡」の「萌え尻尾型」はこちら
079_R0027412
 
「萌え尻尾型」は、萌え点におけるひとつの典型といえると思います。 

次回も弇の萌え点を紹介します。
紹介するのは、もうひとつの典型ともいえる「ハンカチ落し型」です。

前回にひきつづき「吐」の萌え点をご紹介します。

北海道の岩見沢駅前にある「泥吐弇」の蓋です。
502948060
写真:駅からマンホールさん ツイッター

haku
右下に点が一つ多い「吐」です。
「ハンカチ落し型」の萌え点です。

弁にもありましたね「ハンカチ落し型」。
024_R0027168
なにか足りない気分になって、つい足してしまったような点です。

萌え点研究はじめに でも書きましたが、
句読点のような役目を字体に反映させると、いきおい右下に点をうちたくなります。
「弁」の萌え点に「ハンカチ落し型」が多い理由の1つだと推察されます。

今回の「吐」の萌え点は、「泥吐弇」の真ん中の文字に出現しています。
末尾の文字以外に萌え点が出現するのは大変珍しいです。
ただよく見ると末尾の3文字目にも萌え点があります。

502948060

弇の字の右下にあるのは「ハンカチ落し型」の萌え点です。

そうです、この蓋には2つの萌え点が存在するのです。

なんと「ハンカチ落し型」の萌え点が2つ。
ああ、声を大にして「泥吐弇」と言いたいのだなぁと感慨深く鑑賞する次第です。

なお、弇とは「えん」と読みます。
「覆う」という意味です。
泥吐
弇→泥吐のカバーといったところでしょうか。

このような字体ですが、



この蓋の
には、


このように「ハンカチ落し型」の萌え点がついてます。

次回はこの弇の萌え点を紹介します。
っていうか、もう紹介しちゃってますね。



このページのトップヘ